この日もアグネスと2人でウサギさんを訪ねる。今日は車いすに座っていたうさぎさん。私たちとの間には、細長いテーブルが置かれている。私たちの顔を見るなりすぐに泣きだすが理由は分からない。だが話しかけはじめるとすぐに機嫌は良くなり笑顔になる。
この日担当してくれた看護師の方は非常にに気が利く方で、私とアグネスがウサギさんの機嫌のアップダウンに「?」を感じていることに気づいたのだろう、私たちが来る前のウサギさんの機嫌について教えてくれた。どうも午前中はわりと機嫌は良いようだが、時間が経つにつれて赤ちゃんのようにぐずる時間が増えてくるようだ。
この日も車いすで中庭に出かける。やはり外にでると気持ちがよいのだろう。機嫌は更に良くなる。マッサージをしたり声を掛けたりして、私たちが思いつく限りの刺激を与える。この日も木陰に車いすを止めて外の空気。蝉や鳥の鳴き声を聞きながら3人の時間を楽しむ。
この日も中庭を左回りで車いすを押してゆく。2周目を3周目にはいると急に機嫌が悪くなり、病院のドアで待つ看護師の方を見始めるので、部屋に戻ることに。
毎日エナジーゼリーだけを食べているウサギさんの栄養バランスが気になると看護師が言う。鼻の管を抜いているのでそこから食事を体にいれることができないウサギさん。何が好きなのかと聞かれるがそれらは準備できないとのこと。だったらなんで聞くんだと思ったが、聞くことはせずウサギさんが食べられるもの好きなもの、食べられないもの情報だけは一応伝えた。
昨日、一昨日まではエナジーゼリーを口から食べるが飲み込めず途中で吐き出してしまうことがあったようだが今日はしっかりと胃にいれることができたようだ。明日、あらためてこれまで食べさせようとして失敗した御粥を食べてもらうようトライするとのこと。
アグネスが今日の夜便で香港に戻ると伝えると当然だが臍をまげられた。アグネスに対しても私に対しても悲しみと怒りが入り混じったような顔をむけてくる。バイバイのはぐをしようとするがアグネスを拒絶し、窓の方に顔をむける。バイバイと言いながらアグネスも自分の荷物を肩にかけ出口の方へ向かう。
ウサギさんのテーブルに出していた荷物や洗濯物を自分のバッグにしまい、ウサギさんに拒絶をされたが、構わずおでこにチューをして部屋を出た。エレベーターホールの前で鼻にテンポのティッシュを当てながらアグネスが待っていたので、1階まで降り、タクシーを使い荷物を預けてあるホテルに戻った。
荷物を取り日暮里駅までアグネスを見送る。明日からまた一人でウサギさんのお見舞いになるが、基本的なウサギさんの接し方、そして彼女に対するスタンスは変わらない。嫌がられても拒絶されても傍で励まし続けること。
この日の夕方は、両親と次男が子供を3人を連れて、エアビーで私が滞在している駒込のマンションに来てくれた。ウサギさんが倒れた翌日の7月12日にも両親と一緒に日暮里まで荷物運びを兼ねてきてくれた。それにしても子供たちにエネルギーはすさまじい。バッテリー切れを起こしかけていた私の心を充電を8割ぐらまでは満たしてくれた。
ウサギさんの2度目の脳出血を通して家族のつながりの強さを感じた。一緒にいても多くをしゃべるわけではないが、ただ傍にいてくれるだけで心が休まり、1人では崩れてしまいそうな精神状態を整え支えてくれる。これは蛭田家だけではなく、ウサギさんの家族CHEUNG家にも言える。自分は本当に素晴らしい家族に囲まれている。この恩はいつか家族誰かが何か辛いことや悲しいことがあった時に、全力で返したい。ありがとう、おやじ、母ちゃん、よーへー君、シデ君、ダディー、マミー、ジェレミーそして勇士。


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